記憶がなければ「わからない」
記憶を土台に、初めてわかるとかわからないとかいう心理的な反応(感情)が生まれる。記憶がなければそもそも反応(わかった)自体、出現しようがない。
記憶のいろいろ
◎意識に呼び出しやすい記憶
(1)出来事の記憶
自分の身に起こる(移り変わる生活の流れ)一回一回の出来事を記憶する
(2)意味の記憶
生活に必要な様々な概念や約束事の記憶
①ことがらの意味:意味記憶、記号知識として取り込まれるものすべてのもの
何度も繰り返し経験することで少しずつ作り上げていく
漢字、仮名、数字、社会共通
②関係の意味:事柄と事柄の関係がどうなっているのか。経験を重ね合わせ、
そこから抜き出していくもの。
関係を空間的にイメージできる能力が意味理解の土台
③変化の意味:共通特徴を持つ変化や動きを抜き出して、心象化して名付ける
◎意識に上りにくい記憶
手順の記憶
繰り返しているうちに脳が手順を抽出してくれる。
日本語の文法は文法書で学ぶのではなく、日常の経験の中で自然と抜き出される。
こうした記憶、意味記憶や手順の記憶を武器に、我々は新しい事実、新しい経験に立ち向かう態勢を整える。
「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 (ちくま新書)より